本研究の目的は、地方長官会議の一次史料を網羅的に収集して会議の基本的内容を明らかにすること、天皇とくに昭和天皇と地方長官会議との関係を解明することを通して、地方長官会議の日本近現代政治史上の位置を究明することにある。20年度は次の調査・研究を遂行した。 (1)地方長官会議関係一次史料及び昭和天皇と地方長官会議の関係を示す史料の収集の完結都道府県庁文書中の地方長官会議出席知事持ち帰り文書の補充調査として、福岡・佐賀・長崎・宮崎・大分・兵庫・岐阜・長野・愛知の各県公文書館等で史料調査を行い、全国の公文書館所蔵文書中の関係文書の遺存状況の確認を完了するとともに、長崎・宮崎・兵庫・長野の各文書館所蔵文書を収集した。併せて、国立国会図書館・国立公文書館所蔵の地方行政協議会、地方総監会議関係文書及び「新居善太郎文書」中の地方長官会議関係史料を収集した。 また、各県の地方新聞掲載の地方長官会議における昭和天皇の下問と知事の地方事情奏上関係記事の補足収集を行い、全国全都道府県の関係記事収集を完了した。 (2)地方長官会議関係文書の史料論的検討 史料収集の完了を基礎に、この点について、前年度発表論文の内容理解を更に進めた。 (3)戦後・占領下の地方長官会議及び関係諸会議の政治史的分析とその成果の発表 敗戦後の地方長官会議にのみ遺存している内閣・内務省編綴の会議記録に編綴されている懇談速記録の中、幣原喜重郎内閣期の3回分を翻刻し、質疑内容を明らかにした論考を発表した。 (4)単著『府県制下の地方長官会議の歴史的研究(仮題)』の準備 地方長官会議に関して、1992年以来、本科研研究によってに発表した論文に至る合計10編の論文等を基礎に、会議の全内容を体系的に論述した単著刊行の準備を進めた。
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