研究概要 |
歴史叙述は, 歴史学と歴史教育の両者を貫く基層として位置づけられ, 生命と生活を脅かされた人びとの〈経験〉を課題として受けとめるものとしてあった。被爆者の戦後史(「原爆体験」)には, 生命と生活の危険にさらされながら生きるという, 普遍的な〈生〉のかたちがある。それゆえにこそ, 懸命に生きようとする姿は, 絶望のなかに〈生〉を蘇生させるのであり, その〈経験〉と応答することによって, 私たち自身の〈生〉をも励ましていく。過去を生きる他者の「経験のリアリティ」が現在を生きる私たちの「生きるかたち」に及ぼしうるもの, いわば, 歴史における他者と応答することによって発見される当事者性というものに歴史叙述の一つの可能性の中心がある。
|