昨夏、8月1日から3日の3日間、松山市石手寺の史料調査を行ない、宝物館の展示品と阿弥陀堂の仏像についてデータを収集した。この調査は、愛媛大学の院生・学生、天理大学の教員・学生、それに愛媛県内外の博物館・資料館等の学芸員・研究員などにも参加を求め、中世文書・近世文書・棟札・瓦・土器・甲冑・菩薩面・仏像・工芸民俗資料を対象とした総合的な学術調査であり、その成果は『熊野山石手寺宝物調査概報』(2008年3月)としてまとめることができた。 また8月17日から20日までの4日間、高野山金剛三昧院の史料調査に取り組み、同院に所蔵されている上蔵院文書の撮影・採寸を行なった。この調査により、上蔵院に伝えられていた中世文書や過去帳・肖像画の全体状況を確認することができたほか、従来知られていなかった新たな中世文書も発見した。現在、撮影した写真をもとに内容を分折中である。この史料調査と前後して、研究分担者の西尾和美が「天文伊予の乱再考-「高野山上蔵院文書」を手がかりとして-」(『四国中世史研究』9号)を発表し、上蔵院文書を活用しながら伊予の地域史研究を前進させる成果を挙げている。 さらに、1月1日と14日に今治市無量寺の大般若経の調査を行ない、法会の様子を見聞する機会を得た。この調査成果は、川岡勉・國政和弥「今治市無量寺の大般若経奥書について」(『地域創成研究年報』3号)として論文にまとめた。 このように、高野山の史料と伊予国内の寺院史料を並行して調査する中で、中世伊予における高野山参詣と弘法大師信仰の実態が明らかになりつつあり、次年度の報告書に研究成果を実結させるべく作業を進めている。
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