本年度は、当該研究の最終年度にあたっているため、3年間の調査・研究を総括し、研究成果を公表することを中心に作業を行なった。 『今治史談』14号に発表した論文「中世伊予の寺社勢力と弘法大師信仰」、『地域創成研究年報』4号に発表した論文「天徳寺文書(乾・坤)について」は本研究の成果の一部である。また、今年度はじめて開かれた四国地域史研究大会(第1回)においても、「中世の高野山参詣と地域社会-伊予における展開-」と題する報告を行なった. 以上を踏まえて、『高野山上蔵院文書の研究一中世伊予における高野山参詣と弘法大師信仰-』を刊行した。この中には、研究代表者による川岡勉「高野山上蔵院と伊予」を掲載したほか、研究協力者の各論稿(西尾和美「天文伊予の乱再考-「高野山上蔵院文書」を手がかりとして-」、同「高野参詣と上洛-天正十六年の河野通直母等連署宿坊証文をめぐって一」、定成隆「上蔵院文書の研究史と収録状況について」、同「上蔵院文書の古文書学的考察」、桑名洋一「「河野家御過去帳」に見える伊予の戦国期領主」)が収録されている。 戦国期の高野山と地域権力・地域社会の関係については、まだ十分に研究が進んでいない状況にあり、上蔵院と伊予の大名・領主の交流の実態を解明した本研究は、この分野の研究を前進させていく上で貴重な成果を提示することができたと思われる。 なお、金剛三昧院の調査で発見した伊予以外の地域の資料の紹介、石手寺の調査データの公表などは、今後機会を見つけて取り組みたいと考えている。
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