戦国期を経て泰平といわれる政治・社会体制を作り出したのは、徳川家康などを頂点とした武士階層(武家領主)である。世界史にもまれな平和な環境が二百年以上続き、民衆は「家」を単位とした仕事にいそしむことができ、その分、経済的格差も生じた。このような時代に、本来戦闘者(武者)であるものの治者という性格も持った武士層と民衆の間に共有される政治意識や道徳観が形成され、武士像も中世・戦国期から大きく変化した。身分・教諭法令を中心とした藩政史料などの武家史料と農書・家訓・意見書などの民衆・地方史料の両側面の検討から、このような結論を導出した。
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