本年度は、昨年度の研究協力者(大学院生)を新たに研究分担者として、博士論文の指導と並行して、以下のように蘭学者と蘭書の比較調査を行った。 (1)ショメールの『日用百科事典』(7冊本)正編の全項目(17、095項目)を入力した。この結果、『厚生新編』への採用項目数をアルファベッド別に明らかとした。 (2)前年度に引き続き、これらの項目と『江戸ハルマ』『和蘭字彙』『オランダ語辞典』との比較を行った。 (3)国内における大槻玄沢関係史料の調査を行い、宮城県立図書館所蔵の『生計纂要』および国立公文書館内閣文庫・東京国立博物館所蔵の『蘭?摘芳』筆録本との比較を行った。 (4)国立国会図書館所蔵の江戸幕府旧蔵蘭書の調査を引き続き行い、『日用百科事典』2冊本との項目の比較をA〜Rまで行った。 (5)内における宇田川榕菴関係史料の調査を行い、武田学術財団杏雨書屋所蔵の『和蘭志略稿本』『ホイス和解』(A〜B項目のみ)と国会図書館所蔵江戸幕府旧蔵蘭書との比較を行った。 (6)国内における古智謹一郎関係史料の調査を行い、国立国会図書館所蔵の『度日閑言』とその出典となる蘭書の調査収集を行った。 これにより本研究の基礎的データを完成するとともに、蕃書調所・洋学所における江戸幕府の蘭書翻訳事業に従事した個々の翻訳者の生活文化への興味の関心と、翻訳事業の出典と個人的関心との関係を明らかとした。
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