江戸幕府財政の史料は、明治政府に引き継がれなかったために散逸が甚だしく残存量も少ない。僅かに残された財政史料も、収録・紹介している文献は分散的で多岐にわたり利用しにくい。この現状を打破するために、江戸幕府財政史料の全てを調査し、厳密に原本照合を行い、索引を付し、併せて史料学的研究を行った。本年度は前年度に引き続き、東京都江戸東京博物館所蔵勝海舟編「吹塵録」、東京大学史料編纂所所蔵「向山誠斎雑記及雑綴」、国文学研究資料館受託「大河内家記録」、国立公文書館内閣文庫所蔵大田南畝編「竹橋余筆」「同別集」ほか、国立国会図書館所蔵「収蔵大原」、東京都以外では、千葉県佐倉市国立歴史民俗博物館所蔵「石見亀井家文書」、九州大学附属図書館付設記録資料館九州文化史資料部門「長沼文庫」、九州国立博物館、長崎歴史文化博物館、三重県伊勢市神宮文庫、香川県立博物館、高知市土佐山内家宝物資料館、名古屋市徳川美術館、蓬左文庫、新潟市立歴史博物館などの幕府財政関係史料の調査を行った。そして必要に応じて写真撮影を行い、既刊の活字本との照合・校訂を行って釈文原稿を完成、解説と史料解題を施し、大野瑞男編『江戸幕府財政史料集成』上巻(454ページ)を2008年1月に吉川弘文館より出版した。下巻は史料解題のほか索引(人名・地名)・史料編年一覧を付し、同年5月に出版される(448ページ)。また併せて行った幕府財政史料の性格、位置づけ、相互関係、既刊の史料との関係や意味内容を検討した幕府財政史料の構造ないし組織についての史料学的研究の成果は、同書上巻所載の解説と研究成果報告書においても行った
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