研究概要 |
平成19年度は,南北朝期〜戦国期にかけての山野紛争関係史料の収集及びデータベース化と時代ごとの史料の分析・研究,フィールド・ワークを進めた。データベース化については,代表者・分担者・補助者で全国を地域ごとに分担して行った。戦国期の文書も含めて作業を進めているため,平成20年度も作業を継続し,全体としてまとめの検討をすすめたい。 分析・研究としては,室町期の史料を扱った。この時期の山野紛争の史料としては,まとまったものとしては,『看聞日記』・『満済准后日記』に所収される山城国伏見荘関係のものがある。室町期の典型的な山野紛争として,個別に事例は引用・紹介されているものの,フィールド・ワークを含めての本格的な調査・研究はなされていなかった。近世・近代のこの地域の山野利用も含めて,総合的な形での調査・研究を行うことにより,研究上惣村の形成期とされる室町期における,村と山野紛争の関係の特徴について考察することを目的とした。 具体堕には,史料の紛争地帯の中心である,醍醐寺領炭山地域をフィールドにして,地名・信仰・石造物・村の組織・山野の境界などについて調査・研究を行った。その結果曽束・禅定時・炭山・醍醐・伏見といった辰域な地域が山野資源と交流により底く結びついているとともに,資源の利用をめぐる紛争によって,それぞれの地域のまとまりが強化されていく様子が明らかになってきた。従来の研究における惣村の成立という事態を,より広い視野から傭瞰で考えることができるようになったということができる。
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