日本の民間放送、とりわけ日本テレビ放送網の成立の過程をこれまで日本で行われてきた研究を踏まえつつも、米国側の視点から、米国の外交・情報政策のコンテキストにおいて捉え、米国の図書館および公的機関、アメリカ国立第二公文書館(カール・ムント記念図書館、ハーバート・フーヴァー記念図書館、スタンフォード大学ハーバート・フーヴァー研究所、コロンビア大学図書館、ハーヴァード大学ホートン図書館、ハリー・S・トルーマン図書館、ドワイト・アイゼンハワー図書館)等で公開されている資料に基づいて解明した。 この結果、日本へのテレビの導入、とりわけ日本テレビ放送網の成立にはアメリカの反共産主義政策、なかんずく上院外交委員会、共和党右派、ジャパン・ロビー、心理戦局、CIAが深く関与していたことを解明した。一言でいえば、日本へのテレビの導入はアメリカの日本および北東アジア4国(日本、韓国、台湾、フィリピン)対する軍事、政治、文化、心理政策の重要なパーツの一部として位置づけられ、実行されたのだ。 とくに2006年度の成果に関していえば、ハリー・S・トルーマン大統領図書館の文書から、米国が対日戦争終了直後から、戦争遂行のため占領地域に展開した通信網を戦後もそのまま維持し、同地域に対する米国の影響(親米プロパガンダを広めるなど)を戦後も維持する計画を立てていたことがわかった。日本がいち早く国際的電波割り当て会議に参加できたのは、それを後押しすることによって米国の影響下にある通信インフラを維持しようという思惑によるものだった。 これによって、北東アジア4カ国の放送とテレビ導入の歴史と軍事、政治、文化の歴史を新たな視点から複合的に解明する可能性が開けてきた。
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