研究課題
基盤研究(C)
1920年代から30年代初頭を中心に、柳田国男とその民俗学が構成した人脈を地方レベルで主として同時代の書簡を中心にその動態を考察した。その際、柳田の高弟にあたる民俗学者・橋浦泰雄が残した手紙類、書簡に依拠しながら、特に柳田が組織化を重点的に行った地域に着目して柳田民俗学におけるネットワーク形成の特色を抽出することをこころがけた。その結果、それらの地域の特色として、柳田・橋浦の双方から見て、信頼するに足る郷土史家が当該地において自主的な郷土研究の人脈を作っているか否かが判断基準となっていることが分った。ここで使う「信頼」とは、その郷土史家が同時代の政治から離れてあくまで学問として民俗学を捉えているかどうか、に大きな比重がある。橋浦自身は当該期、社会主義運動に関わっており、枢要の郷土史家はそのことを知りつつ、橋浦をあくまで民俗学者として遇しており、そのことは長期にわたる両者の交流からも判明する。柳田民俗学がこうした誠実かつ、同時代の政治に左右されない人材を擁していたことは、戦時下における経験を基礎とした稀有の思想環境に民俗学が位置づけられる礎石となった。以上の組織化に関する人的構成は、これまでの研究史で言われてきた「一将功成万骨枯」という柳田を頂点としたトップダウン型の研究体制とは一線を画し、それぞれの郷土研究が自律的に活動していたことを示す証左となるため、これまでの考えられてきた柳田民俗学の像を大幅に変える可能性を秘めている。
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