近代日本の開港都市(横浜、神戸など)を通じた国際交流の在り方について、本研究は、従来の国家中心観点ではなく、個人、民間、自治体に注目して、多様な観点から明らかにすることを目的としている。2008年度には代表者、研究分担者は、オーラルヒストリー、統計的手法、外交文書という、それぞれの観点から、以下の成果を発表した。横浜のドイツ人の子孫についてオーラルヒストリーとして、大西比呂志「マールー家と横浜」『あゆみ』第61号(フェリス女学院大学、2008年10月)をまとめた。さらに天川晃「国境を越えて生きる」『市民と社会を生きるために』(放送大学、2009年3月)は、開港都市を通じて往来した留学生、お雇い外国人、移民のグローバルな動きを分析した。本宮一男「昭和初期における国際親善策の一側面-シアトルの石灯籠と碑文を手がかりに-」『外交史料館報』第22号(外務省、2008年12月)は、シアトル市に現存する石灯籠と二つの碑文を手がかりに、昭和初期、排日移民法制定を背景に悪化していた日米関係の改善を企図して試みられた日米親善策について、同時期に行われた他の都市間交流の例にも目を配りつつ考察した。
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