結核に関する研究は以下の三つの内容を中心に進めた。第一は戦後結核療養所における患者運動である。戦後の患者運動の誕生から発展に至る経緯を全患同盟や都患同盟の動きを中心にまとめた。第二は結核予防法令の変遷と特徴である。昨年度の研究では帝國議会における議論を中心にまとめたが、今年度はこれらの法令によって患者がどのように変わったか、あるいは変わらなかったか、実際の患者の処遇の様子を中心に整理した。第三は結核撲滅運動である。各地に結核予防団体が誕生する20世紀初頭から結核予防会が組織される1939年までを中心に運動の特徴を明らかにした。結核撲滅運動は国家による大規模な啓蒙活動や文化活動といった性格を帯びていた。この点でハンセン病のような無らい県運動とはその特徴を異にしていることがわかった。 ハンセン病に関する研究は戦争と隔離政策の関わりについて主として文献調査と聞き取り調査を継続しておこなった。特に、「軍人癩」という呼称で呼ばれた戦地で感染・発症した患者の処遇について重点的な調査をおこない、「軍人癩」が戦後、増加するという風評が意図的に流され、「らい予防法」存続の理由とされた過程が明らかになった。
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