研究実績は以下の2点である。 (1)廻船活動と金融の関係性を明らかにした。 北前船が敦賀において売却せずに、蔵預けを行い、それを抵当に資金を借り、蝦夷地産肥料の買付資金とする点を明らかにした(蔵預けを行いそれを抵当に資金を借りることを「引当」とよぶ)。北前船は大坂と蝦夷地をつなぐ廻船であるが、大坂と蝦夷地を航海すると1年間に1往復しかできない。そこで中間地の敦賀に寄稿し、そこで相場をみて、売却するか蔵預けにするかを決め、肥料相場が高い戸売却し、低い蔵預けに資金を借り、相場が高くなったときに売却を行った。その背景には敦賀の蔵が発達していたこと倉庫料(蔵敷)が安いことがあげられる。 この成果については、「近世後期敦賀問屋の取引実態について」地方史研究協議会『敦賀・日本海から琵琶湖へ』に掲載した。 (2)環伊勢湾地域社会における江戸積特産物代金と領主の江戸送金との為替取り組みの実態を明らかにした。 環伊勢湾地域からはおもに木綿・酒・材木などが江戸に送られていた。一方、領主は年貢米を地払いし換金し、江戸に送金する必要があった。そこで江戸から伊勢湾地域に送る代金分と領主が伊勢湾地域から江戸への送金分を為替にし、現金移動をなくす方法がとられていた。領主は年貢米を直接江戸に廻米する方法もとられたが、西三河地域は大藩が少なく譜代・旗本が多数混在する地域であったため、領主には財政的に厳しくいち早く換金したいという意識があったこと、酒造業者にとっては年貢米が地払いされることは、安定的に酒造の原料米の確保につながる。為替送金の利便性でだけでなく、地域経済の効率性を考えるうえでも為替送金の意味は大きかった。 この成果については、『安城市史近世通史編』2007年7月刊行に掲載予定である。
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