本研究は、昭和前期日本の高等教育機関に学んだ台湾知識人の、日本統治下における日本認識と、台湾社会での活動や役割、さらにはその心情について、社会・文化史的観点から多角的かつ具体的に解明することを目的としている。 平成18年度の台湾における資料調査は、平成18年5月における台中の張徳卿(元明台高級中学兼任講師)ならびに台南の高淑媛(国立成功大学歴史系(所)助理教授)との入念な打ち合わせのもとに開始した。両氏と密接に連絡をとりながら、8月に台中・台南・台北において聞き取り調査を実施した。聞き取り調査対象人数は、台中で5人・台南4人・台北1人の合計10人となった。このとき、台北では、台北文献委員会において当時の公文書など関連資料の収集をおこなった。 9月以降、聞き取り調査の分析を進め、11月下旬までに論文としてまとめた。12月における台湾での調査の折、論文記述内容について、夏に聞き取り調査に応じてもらった人たち10人に再確認し、その活字化と発表についての了解を得るとともに、あわせて追加調査をおこなった。12月には、新たに台中で4人、台北で3人、合計7人に聞き取り調査を実施することができた。このときの調査では、台南市立図書館で文献調査、資料収集をおこなうとともに、手記や写真などの貴重な資料を収集することができるという成果を得た。 平成19年1月には、東京において国立国会図書館と防衛省防衛研究所図書館で関連資料の収集をおこなった。先の12月と1月に収集した資料の分析をふまえ、3月中旬に台中と台北で追加聞き取り調査をおこなうとともに国立中央図書館台湾分館・台北市文献委員会・国史館台湾文献館・台南市立図書館において、資料収集を実施した。 3月下旬には、1〜3月の調査の成果をもとにして、平成19年5月における台中の静宜大学での学会発表の論文を執筆するとともに、4月以降の研究準備を進めている。
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