本研究は、昭和前期日本の高等教育機関に学んだ台湾知識人の日本統治下における日本認識と、台湾社会での活躍や役割、さらにはその心情について、社会・文化史的観点から多角的かつ具体的に解明することを目的としている。 平成19年度は、前年度に引き続いて、1920年前後に生まれ日本の高等教育機関に学び台湾社会で活躍してきた各界の人びとからの聞き取り調査を行い、手記や手紙、新聞や雑詰の記事、公文書などの文字資料を収集し論文としてまとめるとともに、これまでの研究成果を著書として出版した。 平成19年5月の台中・静宜大学での国際学会「2007年『日本学と台湾学』」で研究発表を行った折、前年度の聞き取り調査に関する確認作業を行った。6月には前年度に続く『関西大学文学論集』での研究成果発表のための論文「記憶の中の台湾と日本(2)-統治下において高等教育を受けた人びと-」を執筆し、7月に原稿を提出した。8月には台中・台北で聞き取り調査を行い、国立中央図書館台湾分館と台所市立図書館で資料収集を行った。9月初めには出版計画を作成し、出版社との打ち合わせの上、出版時期を平成20年3月中旬とした。 9月以降には、これまでの収集資料の分析を進めるとともに、聞き取り調査に応じてもらった人びとのプライバシーに留意し、その了解のもとに出版のための原稿を執筆した。12月下旬には、聞き取り調査に応じてもらった人びとを訪ね、事実関係め再確認を行い、聞き取り調査および文献調査を継続した。 平成20年3月20日には、これまでの研究成果としての著書『台湾と日本激動の時代を生きた人びと』が完成したので、同月24日から31日までの8日間、これを持参して聞き取り調査に応じてもらった人びとを再訪するとともに、今後の研究調査への協力を依頼した。あわせて、次年度に向けての追加調査と資料収集を行った。
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