本研究は、昭和前期に日本の高等教育機関に学んだ台湾知識人の日本統治下における日本認識と、台湾社会での活躍や役割、さらにはその心情について、社会・文化史的観点から多角的かつ具体的に解明することを目的とした。 平成20年度は、本研究の最終年度にあたり、平成18、19両年度の研究成果を踏まえた追加調査と、これまでの研究のじゅうぶんな検討に力を注いだ。 平成18、19両年度の研究成果は、平成20年3月に著書『台湾と日本 激動の時代を生きた人びと』(東方出版刊)として公表していて、同書は出版後数か月の間に、『毎日新聞』『読売新聞』『産経新聞』『中日新聞』『東京新聞』などの書評欄や文化蘭に取り上げられ、日本のマスコミや学界、日本及び台湾の一般の人びとから好評を得た。このことは、3年間の研究成果の総括の上において大いに役立った。 平成20年8月には台北を中心に調査を行った。台北県と台北市において聞き取り調査を行い、国立中央図書館台湾分館で文字資料の収集を継続した。この8月の成果は、秋に論文としてまとめるとともに、事実確認とプライバシーへの配慮を目的として、12月に再度台北を訪ね、夏の聞き取り調査の再確認を行い万全を期した。 12月の調査では、台中と台北で台湾の人びとの戦時下における空襲体験や出征の体験についての調査も実施した。年明けには、夏と冬の調査によって得た資料の分析を完了するとともに、平成21年3月発行の『関西大学文学論集』第58巻第4号に「記憶の中の台湾と日本(3)-統治下において高等教育を受けた入びと-」を掲載した。
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