後藤新平は、1876年から勤務した愛知県病院でA・ローレッツに師事するなどを通して、ドイツ学の影響を強く受けた。なかでもドイツの衛生医官Louis-Pappenheimの著作から強く影響を受けたことを本人も認めている。そして、そのPappenheimらの著作を通じてイギリスの公衆衛生制度、特に1848年のthe General Board of health創設から1871年のthe Local Government Board設置に至るその中央集権化のプロセスに注目している。そこで、本年度も、昨年度に引き続き、2009年8月24日~9月7日にかけてイギリスでの海外調査を実施し、ロンドン大学図書館のSpecial Collectionsを訪れ、そこに収められるCHADWICK PAPERSを閲覧して、E.Chadwickの公衆衛生改革に関連する文書の調査をおこなった。また、Public Record Officeに赴き、John Simon、および1850年代以降の海港検疫に関わる国際衛生会議に関係する公文書の調査を進め、時間の許す限り文献の閲覧をおこない、複写物を持ち帰った。
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