研究課題/領域番号 |
18520530
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研究機関 | (財)元興寺仏教民族資料研究所 |
研究代表者 |
佐藤 亜聖 財団法人元興寺文化財研究所, 研究部, 研究員 (40321947)
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研究分担者 |
藤澤 典彦 大阪大谷大学, 文学部, 教授 (80100030)
岡本 広義 財団法人元興寺文化財研究所, 研究部, 学芸員 (70261211)
坂本 亮太 財団法人元興寺文化財研究所, 研究部, 研究員 (40435904)
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キーワード | 熊野灘 / 中世墓 / 近世墓 / 両墓制 / 葬送墓制 / 石塔 / 墓標 |
研究概要 |
今年度は主に鳥羽市相差町相差墓地を対象に調査を行った。墓標調査では相差墓地の平板測量を行い約800基の石塔・墓標を計測し、銘文の判読を行ったほか、町内各所において中世〜近世の石造物を確認した。 相差墓地の調査はまだ半分程度が終了した状況だが、おおよその見通しが立ちつつある。 現在の相差墓地は両墓制の理墓であるが、ここに大量の石塔が林立しており、一見石塔墓に見える。しかし、墓標の形態を観察すると、詣墓に存在する大型方柱状のものはほとんどなく、ほぼ全てが櫛形のものである。これは埋墓の墓標が、いわゆる墓標ではなく、野位牌の荘厳化されたものであることを示している。したがって、一見石塔墓にみえる相差墓地は、やはり両墓制の理墓であるといえよう。このことは、聞き取り調査における、墓標呼称が、詣墓のものを「墓石」と呼ぶのに対し、埋墓のものを「墓碑」とすることと対応する。 現在のところ、現在埋墓となっている相差墓地のなかに、一定量の中世石塔(五輪塔)が存在することも明らかになってきた。また、埋墓の墓碑内に近世初期の比較的規模の大きなものが存在することも判明している。これらの銘文が、詣墓の墓石内に存在するかどうかを検討することで、単墓制から両墓制への転換時期を知ることもできると思われる。 予想以上に相差墓地の墓標が多かったため、今年度は民俗調査よりも墓地調査に力点を置いて調査を行ったが、調査の結果、中世墓地の解体から両墓制墓地の成立過程が見えつつある。
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