本年度は、初年度に実施したパイロット調査(1934年ダマスカス結婚契約台帳の一部)をもとに、1934年の結婚行動と都市社会、法律との関連性の有無を確認し、結婚にともなう資産配分分析の可能性について検討をくわえるとともに、データ入力上の不備等の点検、修正もおこなった。その結果、この時期の結婚契約データは、オスマン帝国時代に作成されていた婚姻許可状台帳のデータよりも格段に豊富な内容であることが判明した。したがって、これにより、この時期の結婚契約データ収集を継続する意義が再確認された。 7月末から8月末にかけて、当初予定の2週間ではなく、1ケ月の現地調査を実施し、ダマスカスにおける1934年結婚契約の残りのデータ化を現地の専門家に依頼した。前年度の調査とあわせてすべてのデータ(台帳8冊分)のエクセル入力を終了し、また、滞在中にデータの点検・修正も現地にておこなった。帰国後、簡単な結婚契約入力データベースを完成し、収集したデータを分析した。この結果はフランス委任統治期のシリアの結婚性向分析の際の国際的な基礎データとなる。 また、国内研究機関に所蔵されているフランス委任統治期シリアの結婚登録にかんする法令などの資料を閲覧・複写した。これらの法令を翻訳・分析して、結婚登録の法的整備のプロセスを解明した。 その他に、今年度も昨年度同様、当該研究に関連する書籍の購入を実施した。
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