研究課題
基盤研究(C)
本研究の目的は、19世紀後半から20世紀前半における中東、特にシリアの都市社会変容プロセスの研究の基礎を、歴史人口学の手法を用いて構築することであった。初年度(平成18年度)と最終年度(平成19年度)の夏にシリアにおいて調査を実施し、1934年ダマスカス市の結婚契約1332件の採集データ選定(1件につき30項目)とその抽出、コンピュータ入力とデータチェック、データクリーニングを行った。以上で採集したデータから基礎的な分析を実施し、以下のような結果が得られた。結婚契約は月平均111件、1年のうちでは5月と9〜11月に特に集中(140〜160件)している。ダマスカス市に限れば、平均結婚年齢は男性(29.4才)、女性(20.6才、初婚は17.2才)であった。この辺りは予想の範囲内であった。再婚の割合はおよそ29.8%で、約20年前の1902〜08年のそれ(14.2%)に比べて大幅に増加している。その理由として、19世紀末にダマスカス市のムスリムの間で性比が大きく低下したこと、第一次世界大戦やシリア大反乱(1925-27)の戦災の影響が考えられる。結婚圏では、オスマン朝時代(1912-17)と比べ1934年は市外の住民との結婚が大幅に減少し、分析前の予想に反して結婚圏はむしろ狭くなっていた可能性がある。今回の研究の大きな「発見」は職業データである。分析は十分でないが、結婚契約に記録された職業は、配偶者選択の重要な要素だった可能性が高い。職業欄の父親「死亡」記録を集計して得られる、結婚時の父親生存率は当時の短い平均余命を反映する。男女ともに30才を越えると、半数以上が父親不在である。特に女性について、父親生存率低下が激しい。これは女性の結婚性向にとって重要と思われる。その他、1881年から1931年までの関連法令を収集し、これを訳出した。
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東洋史研究 65-4
ページ: 41-71
粕谷元(編)『トルコにおける議会制の展開-オスマン帝国からトルコ共和国へ』東洋文庫
ページ: 21-66
ページ: 1-19
The Toyoshi-kenkyu vol. 65, no. 4
Kasuya, Gen (ed.), The Evolution of Parlia-mentary System in Turkey, From the Ottoman Empire to the Republic of Turkey (The Toyo Bunko:Tokyo)
Kasuya, Gen (ed.), The Evolution of Parlia-mentary System in Turkey, Form the Ottoman Empire to the Republic of Turkey(The Toyo Bunko:Tokyo)