研究概要 |
中国第一歴史档案館所蔵の康煕朝満文〓批奏摺所収の,西寧に駐箚したモンゴル人チベット仏教僧シャンナン=ドルジによって記された満洲語の奏摺,合計68件を利用し,ラサン=ハンによるサンゲ=ギャムツォ殺害事件を,側近でもあるシャンナンニドルジを通じて,いち早く康煕帝が正確な情報を得ていたこと,またこれとは別に北京からラサ・シガツェに蒙古旗人官僚薦良を派遣し,康煕帝が直接情報をとっていたこと,さらに西蔵・青海と北京を往来する商人からも聞き取りをして,多角的に情報をとっていたことを解明し,その成果を,「清朝档案史料からみたサンゲ=ギャムツォ殺害」と題する論文にまとめた。この論文は,細谷良夫編『清朝史のあらたなる地平』(山川出版社)に収録されている。 また中国第一歴史档案館所蔵の内閣蒙古堂档のなかから,ラサン=ハンによるサンゲェ=ギャムツォ殺害事件に関するものを調査し,題本・表文という公式文書で,ラサン=ハン・ダライ=ラマ6世・パンチェン=ラマ3世・青海王公等事件の当事者が,どのような情報を康煕帝にもたらしたかを分析した。 さらに,当該時期の内陸アジア政策を含む清朝の統治政策について,江戸時代の知識人はどのようにして情報を得ていたか,また理解の到達点はどのようなものであったかを,荻生北渓・荻生徂徠の著作を中心に考察した。その成果は,平成20年度中に,「江戸時代知識人の理解した清朝」と題する論文として,季刊『環』別冊「清朝とは何か」に掲載される予定である。
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