本年度は研究計画にのっとり、南京国民政府成立前の、1920年代前半において江南地域エリート等が中心となって展開した省自治運動期の江南社会について検討を進めた。具体的には、1920年に結成された蘇社という組織を主たる素材として分析を試みた。まず、上海図書館や南通市図書館、北京の国家図書館等で『蘇社』『蘇社社員録』『蘇社特刊』『蘇社大会記録』『蘇社万里演説詞』等の史料を収集した。また『通海新報』を南通市図書館で閲覧し、蘇社関連の記事を丹念に収集した。さらに、『申報』の目録を検索して、蘇社関連の記事を拾い出し関連記事目録を作成し、そのデーターをもとにして東洋文庫に於いて『申報』を閲覧し、関連記事を収集した。これらは現在、継続して分析を行っている。加えて、『張謇全集』を閲覧して、蘇社関連の記述を抽出し、検討した。また、『南通』『江蘇』『江蘇党務週間』(以上、マイクロフィルム)『中央党務月刊』『中央党務公報』を購入して、順次閲覧し、関連資料の収集に努めた。この作業は継続中であり、引き続き次年度に於いても実施する。 また、次年度の研究・史料収集の準備として『全国民国トウ案通覧』を利用して、地方トウ案館に所蔵されている関連資料の所蔵調査を行った。加えて本研究推進のための一環として清末民国初期の江南地域エリートの形成・発展を検討して、論文「清末民初における地域エリートと社会管理の進展--江蘇省宝山県地域社会を例として」としてまとめ、発表した。
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