研究概要 |
本研究は、漢魏六朝時代における強制移動刑の展開について考察を行うとともに、それが唐律の流刑(理念とその現実社会への対応)に対してどのような影響を及ぼしたかを解明しようとするものである。秦・漢初の遷刑、漢〜魏晋南朝の「徒遷刑」、北朝の流刑が主たる考察の対象となるが、これらについてはすでに昨年度の研究でおおよその目途がついたので、今年度は更に進んで、隋唐時代の強制移動刑をも考察対象とし、資料の収集と研究を行なった。その主たる成果を以下に列記する。 (1)六朝隋唐法制史料の収集とデータベース化:正史や『資治通鑑』を丹念に読み込むほか、『冊府元亀』『文館詞林』や石刻史料などから広く法制史関連資料を抽出して、データベースを補った。 (2)敦煌・吐魯番出土資料の精査と六朝隋唐法制史関連資料の抽出:国内の研究機関が所蔵する敦煌・吐魯番出土資料の写真・マイクロフィルムを精査し、関係資料の収集を行った。今年度は、ロシア所蔵の敦煌文献資料および吐魯番出土の資料に重点を置いた。 (3)『宋会要輯稿』からの関係資料抽出:宋代の法制関係資料について、特に刑罰に関するものを中心に収集し、データベース化した。(4)との関連から、北宋時代に重心を置いた。 (4)天一閣所蔵「天聖令」の内容精査, 2006年11月に公開された「天聖令」は北宋前半に編纂された法令集であり、唐令研究にも大きな影響を与える重要な新資料である。刑罰制度研究との関わりから、今年度は特に、唐代の刑罰制度資料として利用が可能な「獄官令」について精査を加え、内容を検討した。 なお、今年度は、大学の個人研究室が耐震改修工事の対象となったため、およそ半年のあいだ通常の研究活動が困難となった。また、その竣工が予定より若干遅れてしまったために、物品の購入時期がずれ込み、謝金の使用に至っては断念せざるを得なかった(作業場所の確保が困難となったため)。この点を特に申し添えたい。
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