本研究「内モンゴルに対する初期の蒙古例と清朝法制史」は、4年計画で、崇徳3(1638)年のモンゴル文法規(北京・国家図書館所蔵)、康煕6(1667)年のモンゴル文法典(北京・中国第一歴史档案館所蔵)、康煕35(1696)年のモンゴル文法典(ウランバートル・モンゴル国立図書館所蔵)の計3点の初期蒙古例法典を読解整理し、清朝前半期における内モンゴルへの立法のありようと、清朝蒙古例の起源を問う、という目的を持っている。 平成19年度の研究計画は、まず漢文地方誌を購入すること、夏にモンゴル国立大学法学部で共同研究と連続講演をし、モンゴル人研究者たちと意見や情報を交換すること、中国第一歴史档案館からの全訳許可がおりた康煕6年法典の訳注を開始すること、ディリコフ氏による康煕35(1696)年頃の法典のロシア語訳本を読み始めること等であった。 この内、地方史は予定通り購入が進み、モンゴルでの共同研究と連続講演も、本科研費で出張して実施することができた。共同研究では、実際にモンゴル国の研究者たちが現在進めている計画が本研究と決して重なっておらず、むしろ意見交換することによって、相互に利益が出ることも確認できた。 次いで、康煕6年法典の訳注を実際に開始することができた。慎重に訳注の方針を立て、今後もひたすら進めていく予定である。一方、ディリコフ氏による康煕35(1696)年法典のロシア語訳本読解は、ロシア語の授業担当を申し出て開始することはできたものの、予定していたほどには進まなかった。なお、モンゴル国ウランバートル市と東京にて、各々、清代モンゴル法制史の公文書、私文書に関する研究口頭発表を実施することができた。
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