研究課題
19年度は、インドやマレーシア、日本などにおいて新史料収集のための実地調査を行ったほか、東南アジアや欧州(ポルトガル)、韓国にも赴いて学会等での報告を通じて本研究課題の成果発表を積極的に行った。前者の史料の収集・調査に関しては、例えば、旧英領海峡植民地やマレー連合州地域における商標(商品標記)などの商標とその管理制度に関する資料の収集を行った。具体的には、法令整備や登録手続きに関わる植民地省管轄の行政資料や訴訟資料である。また、この商標、意匠、特許などの商業・工業制度とその制度管理の歴史に関しては、戦前の日本(特許局)や英領インド(登録局)などに関しても、本研究課題の中で、既に、研究を推し進めている。こうした知的財産や商標に関わる戦前もしくは植民地期の制度の進展に加え、こうした制度への在来のアジアの商人(ムスリムを含む)の対応を歴史的に微細に検証することで、家族やコミュニティを基盤にしてインドから環インド洋世界、さらに東アジアを股にかけて拡張された広域ネットワークの動態を、徐々にではあるが、明らかにしている。さらに、19年度には、従来、自身で集中的に取上げてきたマッチに、自転車とメリヤスという軽工業製品や、特定の食糧品を、研究上の射程に加え、製品とそれに関わる社会史的把握を試みた。これらは、学会等の口頭報告にも盛り込まれている。また、19年度には、研究成果の公刊にも、積極的に取り組んだ。18年度にオランダで開催された近代南アジア研究学会での報告を学術雑誌に発表したほか、邦文では、ムスリムを含むインド人商人の広域ネットワークに関して、英植民地や領事館網の広がりという政治基盤と、雑貨(軽工業製品や食糧品)流通の広がりという経済基盤の双方から、理論的な整理を行うなどした。
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『自然と文化そしてことば』(特集:インド洋海域世界一人とモノの移動)葫蘆舎 4号
ページ: 52-59
Journal of the Economic and Social History of the Orient (The Netherlands, Brill) Vol.50,No.2-3
ページ: 287-324
『外国学研究』<特集:女性と世界>神戸市外国語大学外国学研究所 66号
ページ: 77-105