1. 行財政政策に視点をすえながら、1949年中国革命前後の政治変動の内実を地域・地方の実態から明らかにするという研究目的に即して、研究代表者の金子は、今年度も連携研究者の笹川裕史(埼玉大学教養学部)・水羽信男(広島大学総合科学部)とともに、上海市梢案館・上海市図書館において歴史档案(公文書)史料及び関連文献史料の調査と収集を行った。金子がめざす戦後・人民共和国成立時期の上海同業団体(各業工商同業公会)・商工業税制関連档案・文献の収集は、量的に膨大であるため、本研究計画の期間において調査には絶えず苦心したところだが、ほぼ計画当初に予定した主要な同業公会と行財政機構の档案には目を通すことができた。 2. 研究代表者の金子は、研究計画期間において収集した上海同業団体・商工業税制関連档案について、格案番号順の総目録、及び(1)貨物税(戦後時期)、(2)貨物税(人民共和国成立時期)、(3)同業秩序統制(戦後時期)、(4)工商業税民主評議関連(人民共和国成立時期)に分類した問題群別の目録を作成した。また、その収集史料の整理を踏まえ、広島・中国近代史研究会において「近代中国における国家、都市税制と同業団体-体系的把握に向けた序説-」というタイトルで発表し、本研究計画を中国近現代史全体のなかに体系的に位置づけようとする新たな研究の枠組みを提示した。さらに、以上の研究と並行して、中国近現代史全体を見通す視点を鍛えるため、昨年度に引き続き中華民国から中華人民共和国に至る統治体制の変容について成果を公表した。 3. 連携研究者の笹川は、引き続き四川省を対象としながら、農村における政治文化という視角から49年革命前後の農村社会の変動について新たな知見を獲得し、同じく水羽は中華民国期から人民共和国毛沢東時代に至る時代を、リベラリズムの視点から再検討する斬新な研究成果を明らかにした。
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