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2008 年度 実績報告書

史料とてのシュメール語王讃歌の活用

研究課題

研究課題/領域番号 18520545
研究機関早稲田大学

研究代表者

前田 徹  早稲田大学, 文学学術院, 教授 (80116665)

キーワードシュメール / 王讃歌 / ウル第三王朝 / 古代メソポタミア
研究概要

本研究課題では、ウル第三王朝時代の王讃歌を、王碑文と対比させながら、1)シュメール語王碑文や王讃歌は、「知られた事実」のみを記すという単純な内容でないこと、2)王讃歌と王碑文は、年名とともに、王の自己表現として捉えられること、3)分析に当たっては、都市国家分立期、領域国家期、統一国家期に区分されるそれぞれの時代の特徴を考慮すること、この3つを前提にして検討した。本年度に得られた新知見は次のようになる。
王讃歌は、ウル第三王朝初代ウルナンムが、ウルナンム法典などの前文に記された王権授与の構図、神々が地上の支配権を或る神とその神が都市神である都市に下し、そのあとに人間である王を選ぶという構図に則り、王権を授与されたことを感謝し、大いなる神々と王都となったウルを讃える意図を持って新規に作り出したジャンルである。第2代シュルギは、ウルナンムの意図に加えて、自らが王権を担うに相応しい資質を有することを主題とした。なかでも、英雄時代のギルガメシュと現在の王シュルギを明確に対比させることで、英雄としての王のイメージを定着させた。
王讃歌に神たる王は描かれない。支配下諸都市が、神格化された王を守護神として祭ってはいるが、王自身は、君臨する王の威厳と超越性を、神ではなく、英雄として描く。ここに、メソポタミアにおける王の神格化の限界性がある。神たる王を強調しないとしても、王碑文との対比では、王讃歌は王を神々や英雄の世界に置いて讃える内容であり、王が実際に為した功業を讃える王碑文とは作成意図が全く異なるのである。
王讃歌は、王の功業という事実を丹念に追う表現ではなく、統一国家期における王権理念の表出である。王讃歌に豊かな表現を与えるために、ウルの王の主導のもとに、シュメール語英雄叙事詩の編纂や英雄が活躍する英雄時代の設定が為されたことも確実になる。

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2009 2008

すべて 雑誌論文 (4件) 学会発表 (2件)

  • [雑誌論文] Martu 族長制度の確立2009

    • 著者名/発表者名
      前田 徹
    • 雑誌名

      特定領域研究「シュメール文字文明の成立と展開」研究報告

      ページ: 51-57

  • [雑誌論文] シュメールにおける地域国家の成立2009

    • 著者名/発表者名
      前田 徹
    • 雑誌名

      早稲田大学大学院文学研究科紀要 54・4

      ページ: 39-54

  • [雑誌論文] シュシンの登位事情2008

    • 著者名/発表者名
      前田 徹
    • 雑誌名

      西洋史論叢 30

      ページ: 1-14

  • [雑誌論文] 古代メソポタミア史研究の課題2008

    • 著者名/発表者名
      前田徹
    • 雑誌名

      歴史と地理 616

      ページ: 34-37

  • [学会発表] ウル第三王朝時代の王碑文と王賛歌2008

    • 著者名/発表者名
      前田徹
    • 学会等名
      シュメール研究会
    • 発表場所
      京大会館
    • 年月日
      2008-05-25
  • [学会発表] シュメール世界の都市民と周辺の民2008

    • 著者名/発表者名
      前田徹
    • 学会等名
      日本西アジア考古学会
    • 発表場所
      サンシャインシティ
    • 年月日
      2008-05-18

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公開日: 2010-06-11   更新日: 2016-04-21  

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