今年度は、今回の科研が最終年度にあたるため、全体的強化と部分的補強、かつ海外華僑教育に重点を置いた。そして、さらに推敲を加え、『戦争と華僑』(前編)として近い将来出版しようと考えて急ピッチで研究を進めているところである。今年度、特に重視して実施したのは以下の通り。 (1)今年度は、華僑史研究をさらに構造的に深めるため、予定通り研究が少ない南洋における華僑教育に本格的な解明にも取り組んだ。 (2)万宝山・朝鮮事件研究を充実させるため、中国側からアプローチした。これにより朝鮮民衆による華僑虐殺暴動の構造の全面解明を目指した。ただし吉林省档案館は入館できたものの、遺憾ながら朝鮮・韓国の領士・民族問題が絡まるため、史料開放が不十分であった。したがって、重点を東北師範大学図書館での史料調査・収集、関係研究者との対談に置き、かつ計画通り万宝山での現地調査を実施した。海外旅費はこれに充てた。 (3)華僑関連の補強図書・史料を購入した。物品費はこれに充てた。 (4)夏休暇、冬休暇を利用し、史料を整理、読み込み、分析し、新たに論文「『大東亜共栄圏』下の南洋における華僑教育」を完成、発表した。また、戦時期における日本・台湾・朝鮮各華僑学校教育に関しても研究を補強、深化させた。こうして本年度の計画は九分通り完遂した。
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