研究概要 |
東洋文庫が収集したロシア科学アカデミー東洋学研究所サンクト・ペテルブルク分所所蔵内陸アジア出土文書microfilm中、敦煌等漢語文献(40リール)『文献番号・コマ数対照一覧表』のデータベース化を完了させ、これを一般公開すべく『仮自録(第一稿)』刊行の準備にとりかかった。 『仮目録』によって、既刊の『俄蔵敦煙文献』(全17冊,19,000余点)に未収録の数百点の漢語文献の存在が明らかになった。そこで本年度はこの新資料の内容分類・研究に着手した。この作業はロシアの敦煌文献の価値を高めることになろう。 本研究が対象とする内陸アジア出土漢語文献を補充するために、本年度も中国唐宋文物視察団(土肥義和・石田勇作・張銘心・宇都宮美生・西尾亜希子ら)を組織して、旅順博物館・河南大学歴史系・開封市繁塔(国家重点文物指定)・中国国家図書館善本特蔵部を訪問した(2008年2月〜3月8日)。(1)旅順博物館では、大谷探検隊吐魯番将来遺品に含まれる唐代彩色絵画資料断片の連接関係の調査を行った。龍谷大学所蔵断片との連接について成果公表を協議した。(2)河南大学では、北宋太宗期(10世紀後半)に建立した繁塔に現存する供養人題記や石経題記を昨年に引き続き調査し、写真による資料の収集を行ったこれらの収集は敦煌莫高窟にある9-10世紀の厖大な壁画群に記された供養人の題記と比較する上で貴重である。(3)開封では、同市文物管理局長・主任研究員劉順安氏や河南大学の専門研究者たちと繁塔の資料について2回の検討会会議を行い、得た成果の一部は来年の研究報告書において発表することが確認された。 中国国家図書館では、未公開の敦煌「社」関係文書の特別の閲覧許可を得て、文書の調査と抄録とを行った。この調査は上記3の(2)と同様、敦煌と国都における仏教信仰者層の諸相を明らかにする上で重要である。
|