本年度の研究目的は以下のことを明らかにすることであった。(1) スペイン軍はなぜスペイン領モロッコにおいで「原住民」兵部隊を組織伝それに依拠しようとしたのか、(2) 「原住民」兵の徴募はどのようにおこなわれたのか、(3) 「原住民」がスペイン軍の諸「原住民」兵部隊に入隊した動機は何であったのか、(4) 「原住民」兵はスペイン軍のモロッコ戦争でどのような役割を果たしたのか、(5) モロッコ植民地で「原住民」兵力を使用できた軍アフリカ派はスペイン軍内でまたスペイン政治においてどのような役割を果たすことになったのか。以上の目的を達成するために本年度には以下の研究作業をおこなった。(1) スペイン語・フランス語・英語文献での研究成果を摂取した。(2) スペイン・マドリードに出張し、スペイン陸軍文書館に所蔵されている「原住民」兵関係文書を閲覧した。(3) スペイン国立図書館旧アフリカ資料室の資料、マドリード新聞資料館に所蔵されている新聞・雑誌を閲覧した。(4) 東京大学図書館、東京外国語大学図書館に所蔵されている資料を閲覧した。(5) 以上の作業を経て、スペイン領モロッコにおける「原住民」兵の徴募と動員に関する論文の執筆を進めた。本論文では、「原住民」兵総織の目的が主にスペイン人の「血と金銭」を節約するためであったこと、広い範囲で「原住民」兵の徴募がおこなわれたこと、「原住民」の入隊動機では経済的理由が優っていたこと、「原住民」兵はモロッコ戦争で「突撃部隊」として使用されたこと、軍アフリカ派ば「原住民」兵部隊を使用して植民地戦争で勝利したことで軍内だけでなくスペイン政治においても大きな役割果たすことになったこと、が明らかにされる。本論文は2009年度内にいずれかの雑誌に発表する予定である。
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