平成18年度は、9月20日から27日、平成19年3月4日から8日にかけロンドンに滞在し、大英図書館、英国公文書館などで関連資料の閲覧、収集に当たった。とくに1930年代の国際連盟の婦女子売買禁止問題への取組み、それに対するイギリスの対応に関する資料を収集した。 また関連して、国際連盟の保健衛生面における中国援助問題に関する資料も収集した。保健衛生面の資料を参照したのは、以下のような理由による。人身売買の犠牲になった婦女子は往々にして売春に従事させられることが多かった。関連する二次文献(たとえば藤目ゆき『性の歴史学』や福田真人『日本梅毒史の研究』など)により、売春問題-公娼制度の存続-梅毒などの性病管理問題の関連が明らかとなった。このため、保健衛生面の資料を参照したのである。 保健衛生に注目した結果、1928年以降、国際連盟が中国に対し当該側面での援助をおこなっていたことがわかった。これは、性病ではなく、より広く伝染病全般への対処・検疫制度確立などに関する援助であったが、資料を読み解いていったところ、興味深い問題を発見することができた。対中援助において活躍した国際連盟のライヒマン保健部長の活動に、当時の日本が非常に強い不快感・不信感を抱いていたということである。これは当時の国際連盟と東アジアに関し重要問題と考えられるので、現在、ライヒマン保健部長の活動を1928年から1935年までまとめ、それに対する日本とイギリスの反応を整理して論文を執筆している。平成19年度中に発表できるようにつとめている。
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