本年度は、国際連盟が扱った婦女子売買禁止問題のうち、昨年度以来注目しているロシア革命後に難民として中国に逃れたロシア人女性に関する問題につき調査を続けた。成果は、「帝国の興亡と人の移動--国際連盟が見た中国のロシア人女性難民」(仮題)として2010年刊行予定の木畑洋一・後藤春美共編著『帝国の長い影--20世紀国際関係の変容』の一章として発表すべく務めており、現在ほぼ執筆を終えたところである。この論文の内容に関しては、2008年12月9日に行われた不平等条約改正研究会(東京大学社会科学研究所五百旗頭薫准教授主催)で報告した。2009年3月28日にはオクスフォード大学セントキャサリンズ校神戸インスティテュートで行われたオクスフォード・神戸ワークショップViolence and Statehood in Europe and Japanでも英語で報告した。 また、婦女子売買問題をはじめとする社会人道問題に関わった個々人(たとえば国際連盟社会セクションの長を務めたイギリス人女性レイチェル・クラウディなど)や民間の篤志団体(アソシエーション)にも関心を持ち、関連する二次文献を読み、2009年2月25日から3月15日にかけてはイギリスに赴いて一次資料の収集を行った。この問題に関しては、現段階でまだ具体的成果を生み出すには至っていないが、今後も継続して関連する課題に取り組んでいきたいと考えている。
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