研究概要 |
本研究は,ナチスによる弾圧と離散という状況にあって,ドイツ「第三帝国」に対して果敢に抵抗を試みた中欧(ドイツ,オーストリア,チェコスロヴァキア)のドイツ人社会主義者の運動を相互に比較検討し,それぞれの国内の抵抗運動との関係および戦後秩序の形成,とくにドイツ問題の解決に向けての彼らの対応を明らかにしようとするものである。 本年度は,ヒトラーの権力掌握後,プラハ,パリ,ロンドンへと本拠地を移したドイツ社会民主党亡命指導部(ゾパーデSopade)とその周辺に位置した社会主義者たちの抵抗運動を,ドイツ本国における動向,他地域の社会主義者との連携・対立,および戦後ドイツ構想と関連づけて調査した。亡命ドイツ社会主義者の残した新聞・雑誌史料についてマイクロフィルムを取り寄せて,検討を開始するとともに,ドイツ社会民主党亡命指導部ほかの未公刊史料があるオランダ(社会史国際研究所),ベルリン(ベルリン国立図書館),プラハ(カレル大学図書館)に出張し,関連史料の整理・検討に努めた。また,「第三帝国」期のドイツおよびドイツ占領地域における抵抗と迫害,世論動向に関する基本史料,ゲシュタポ・全国保安部の報告文書を取り寄せて検討を開始した。 以上の研究成果に基づき,論文「ヴァイマルの残照--反ナチ抵抗運動の戦後ドイツ・ヨーロッパ構想」を執筆し,ゾパーデをはじめとするドイツ社会民主党と反対派グループの反ヒトラー構想をチェコスロヴァキア,オーストリアの社会主義者の戦後構想と合わせて検討した。
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