研究概要 |
本研究は,ナチスによる弾圧と離散という状況にあって,ドイツ「第三帝国」に対して果敢に抵抗を試みた中欧(ドイツ,オーストリア,チェコスロヴァキア)のドイツ人社会主義者の運動を相互に比較検討し,それぞれの国内の抵抗運動との関係および戦後秩序の形成,とくにドイツ問題の解決に向けての彼らの対応を明らかにしようとするものである。 本年度は,オーストリア,チェコスロヴァキア(いわゆるズデーテン地方)のドイツ人社会主義者の抵抗運動のありようを,とりわけ独墺合邦とズデーテン・ドイツ併合(1938年)の後の国内外の状況と関連させて調査・研究した。ドイツ社会民主党亡命指導部との関係および戦後中欧をめぐる構想を検討するため,新聞・雑誌史料についてマイクロフィルムで引き続き検討すると同時に,今年度は,オーストリア抵抗運動資料館(ウィーン),クラクフとワルシャワの大学図書館,ベルリンの国立図書館およびベルリン工科大学反セム主義研究所にて関連する文献・史料の収集・検討を行った。また,ゲシュタポ・全国保安部の報告文書のうち,オーストリアおよびズデーテン地方における抵抗と迫害,世論動向を調査し,亡命者社会主義者の抵抗・戦後構想との関連性を研究した。 以上の研究成果に基づき,論文「ヴァイマルの残照-反ナチ抵抗運動の戦後ドイツ・ヨーロッパ構想」を執筆し,ゾパーデをはじめとするドイツ社会民主党と反対派グループの反ヒトラー構想をチェコスロヴァキア,オーストリアの社会主義者の戦後構想と合わせて検討した成果を公表した。また,独墺合邦・ズデーテン・ドイツ併合(1938年)前後のチェコスロヴァキア・ドイツ人社会民主労働者党の対応を他の政治勢力との関連で検討した「離散と抵抗:ヴェンツェル・ヤークシュ覚書(3)」を発表した。
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