本研究の目的は、第1に、第二次世界大戦開戦後にソ連の支配下に入った東ガリツィアでのウクライナ人・ユダヤ人関係の緊張化の原因と過程を解明すること、第2に、独ソ戦直後の東ガリツィアにおけるポグロム発生のメカニズムを可能なかぎり解明することにおかれていた。 本年度は、研究実施計画の1に掲げた通り、第1、第2の研究目的にかかわる3年間の研究の成果を著書にまとめる作業に集中し、2008年9月、人文書院より『ガリツィアのユダヤ人--ポーランド人とウクライナ人のはざまで』(総ページ数270ページ)を刊行した。本書は『図書新聞』第283号(2008年11月8日号)の書評欄で取り上げられ、また社会思想史学会年報『社会思想史研究』2009年号でも書評が掲載される予定である。 研究実施計画の2に掲げた東京外国語大学とポーランドのクラクフ国際文化センター共催の国際移動セミナー「ヨーロッパ東部境界地域の共有遺産研究 第1回ガリツィア」にも予定通り参加し、セミナーで得た知見を大阪大学グローバルCOEプログラム「コンフリクトの人文学国際研究教育拠点」の研究プロジェクト「シオニズムの考古学:現代ユダヤ社会におけるディアスポラとイスラエルの相克」のワークショップ(2008年12月21日開催)で報告した。 研究実施計画の3に関して、2009年3月19日から3月27日まで、ラトヴィアのリーガの国立歴史文書館、国立図書館、ユダヤ資料センター等で史料調査を実施した。今後、東ヨーロッパの現地人のホロコースト加担問題に関して、リトアニアおよび西ウクライナのケースとラトヴィアのケースとの比較研究に発展させたい。
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