研究課題
研究の第2年目にあたる本年度は、まず前年度からの継続作業として、欧米における研究史の精査をおこなった。「古代末期学派」台頭時から今日に至るまでの研究史をおおよそ把握できた。さらに、こうした研究史を検討してわが国学界の欧米学界に対する独自性を明確化するために、後期ローマ帝国時代史研究に従事する日本人研究者の間で討論をするシンポジウムを企画した。この準備は年度内にすべて終わり、平成20年5月開催の日本西洋史学会大会古代史部会において実施することになっている。 次に、本年度は2度の海外調査を実施した。第1回目はウィーン大学を拠点とし、同大学のハンス・トイバー教授の支援の下で、ドナウ川上・中流域の属州の実態に関する研究資料調査をおこなった。同教授やその指導下の研究者との意見交換も有意義であった。さらに、ハンガリーのブダペストにおいて、帝国属州パンノニアの中心都市アクインクムの遺跡調査をおこなった。調査にあたっては、同遺跡博物館のマギット・ネメト博士らの支援を受けたが、とりわけ同博士が発掘を担当したローマ浴場遺跡について、自ら懇切丁寧に案内・説明してくれたおかげで、短時間でも効率的に遺跡の情報を得ることができた。アクインクム博物館のスタッフの力添えを得、ブダペスト市内に散らばった遺跡をつぶさに調査できたことは、本研究が属州の実態を踏まえた政治史を構想しているだけに、たいへん貴重であった。この調査については、公刊済みの発掘報告書などを改めて参照の上、次年度に報告書を書く予定である。2度目の調査はドイツ・ハイデルベルク大学にて実施した短期間のもので、旧知のヴィトシェル教授らの厚意により、3、4世紀の公刊史料の利用で成果を得た。
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A. Chaniotis, et. al.(eds.), Historicizing Classics(ドイツFranz Steiner社出版予定) (所収)