本研究は、帝政ロ-マ時代の後半、いわゆる後期ロ-マ帝国時代の帝国西部の政治状況を多元的に分析しようとするものである。近年の学界における古代終焉期研究と西ヨ-ロッパ初期中世史研究の発展を批判的に摂取し、また帝政前半期に関する自身の研究成果を踏まえつつ、後期ロ-マ帝国時代の帝国西部の政治状況を、独自の視点から検討する。「独自の視点」とは、従来の諸研究のようにロ-マ市やイタリアを中心とする地中海帝国としてのロ-マ帝国の動向を基軸とせず、むしろイタリアを離れた辺境の属州に視点を置き、時代を動かす動因の場を考察することである。さらに、帝国をハイブリッドな構造体と捉える観点から、古代終焉期の政治力学を論じる際に「ロ-マ人」対「ゲルマン人」といった安易な二項対立に陥らずに、多元的な解析を試みることも、本研究の独創的な作業である。辺境属州こそ古代から中世への移行期の政治的激動の場であり、また安易な二項対立を取らない解析によって、研究の特殊ヨ-ロッパ的な性格を克服できると期待される
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