研究概要 |
1 本年度は、「すず」という鉱物資源から産み出された近世イギリスの王権(国家)諸歳入とこれらの徴収、請負のあり方について、ロンドンの輸出業者の役割を中心に、関税台帳を一次史料として実証的解明を行った。 2実証作業として以下を行った。 (1)史料整理 TNA/PRO所蔵のマニュスクリプトPort Books、(London outwards)のマイクロフィルムからすず輸出のデータを抽出し(サンプル年は約10年ごとの1年間を4年分)、輸出人、輸出向け地、輸出量を統計データ化した。 (2)刊行史料の購入 Calendar of State Papers,domestic,charles II 全27巻を購入した。 (3)刊行史料との突合せ 上記のマニュスクリプトから抽出したデータを、Calendar of State Papers,domestic、およびTreasury Papersのデータから整理したすず先買請負のデータとつき合わせて情報の精度を高めた。 3学会大会・研究会に出席し、国際商業史について知見を深め、意見を交換した。 史学会大会 11月(於 東京大学)、国際商業史研究会例会 12月(於 京都府立大学) 4これらの検討の結果を『九州工業大学工学部研究報告(人文・社会科学)』第56号に英文で発表した。ここでは、本研究課題における4つの検討項目のうち「ロンドン商人のすず関連歳入徴収請負業参入」について、イギリス産すずのロンドン港からの輸出について、TNA/PRO所蔵の関税台帳(ポートブックス)の分析を行った。その結果すずの輸出業者としてのすず先買請負人の占める輸出の割合は9割近くに達していることがわかった。その輸出向け地は多くが地中海であって、特にレヴァント地域への輸出量の多さが新たな知見として得られた。
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