本研究は、米陸軍航空軍の1930年代からの伝統的な戦略爆撃論が「精密爆撃論」であったにもかかわらず、実際の爆撃活動が第2次世界大戦中にいかなる過程を経て無差別爆撃の全面的な展開へと急速に変化していき、広島・長崎への原爆投下という大量無差別爆撃の極限にまで至ったのか、その歴史過程を分析し考察することを目的として行われる。具体的には、精密爆撃から無差別爆撃への移行の歴史過程の分析、ならびにそうした移行をもたらした軍事的要因、米陸軍航空軍指導部による正当化論、また敵国市民攻撃の軍事的正当化に対してアメリカの政治指導者たちと国民の反応したのに関しても、米国民の倫理観や人道意識との関連において考察する。
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