研究課題
基盤研究(C)
平成18年度の研究実施計画のうち、第1の課題としたAuxois税収管区の税収記録調査に関しては、予定通りに1433年の帳簿から1441年のものまで、通常税収記録、森林・水資源利用税gruerie徴収記録および12ドニエ税(5%の売買税)徴収記録の分析調査を実施した。手元の1420年代の税収記録の分析データを加えた結果、およそ以下のような知見を得た。1420年前後のインフレ政策の結果、通常税収は1421年をピークとする膨張が見られるが、22年にデノミを実施してデフレ政策に転じたため、税収総額は顕著に縮小する。この縮小が1426年頃から実質的な減少となり1433年まで継続的に下落した。この1433年に底を打ち、1438年には1427年の水準を回復した。また森林・水資源利用税収額もほぼ同様の時系列変化を示す。しかし消費税である12ドニエ税は2年遅れの変動を示し、底を打つのは1435年。翌36年からは急速な回復を示す。第2の研究課題である通貨政策に関しては、1421年と23年に2度にわたって発令された両替規制令を分析して、当局の意向を解明した。両替業者に通貨市場を解放し、放任することは通貨危機を招くだけだと官僚は考え、会計院を核とする厳密な管理体制を構築した(詳細は『紀要』に発表)。また1420年暮れの業務書簡(未刊行史料)に財務官僚の貨幣思想が如実に表明されていることを解明した発表(名古屋大COE国際研究集会「報告書10号」)を行なった。1421年の御用税は、銀の直接徴収という異例の方式を採用したが、史料(ADCOB2788)の保存状態が悪く、読解と分析を継続中であり、1435年の御用税徴収記録、あるいは他の税収管区の記録と併せて解明する。第3の課題はブルゴーニュ地方の地元貴族の動向を調査することであったが、これも行き届いた調査ができず、次年度以降に改めて取り組む。
すべて 2007
すべて 雑誌論文 (2件)
川村学園女子大学研究紀要 18・1
ページ: 1-38
21th Century COE Program, International Conference Series no.10. "Genesis of Historical Text and Map, Text/Context 2." no.10
ページ: 49-59