研究概要 |
ブルゴーニュ地方の各管区の税収記録を調査し、税収の長期動向を掌握することが第1の目的であった。Autun管区の税収簿ADCO B2381(1434年)からB2402(1441年)までを予定通り調査した結果、昨年度調査・分析したAuxois管区の動向をほぼ裏付けることができた。通常会計は1433年に底を打って、翌年から回復局面に入ること。消費課税と酒税の動向は2年遅れであること。従って両管区の税収動向には高い類似性が認められることが確認された。しかし水・森林利用税gruerieと旧税収区vierieの動向は不安定で、単調な傾向を示さず、なお検討を要する。Dijon管区に関しては本年度はADCO B4485(1434年)からB4489(1436年)まで3年分の調査しかできなかったので、来年度の調査終了後に言及する。 第2に予定した臨時課税(いわゆる御用金)の徴収状況と納税者基本台帳(保存状態は管区ごとに格差が顕著)との付き合わせは、予定を変更し、現地調査から外した。納税者基本台帳Recherches des feux(B11510〜B11593)の写真版が当公文書館のホーム・ページ上で公開されることとなり、現地で調査する必要がなくなったためである。 第3の課題、つまり1420年代初頭の貨幣政策の解明に関しては、昨年度の宿題であったオーソワ・バイイ管区の1421年の銀直接徴収の記録(B2788)を詳細に検討した結果、解読にほぼ成功し、その類例のない特異性に意義を与え、造幣収入を重要な財源と見る官僚の思考が次第に変貌して行く様を示唆する論考を大学紀要に発表した。 なお造幣権獲得交渉や貨幣政策決定に際して、官僚が作成した説明資料、ないしその草稿と思われる数点のメモ、ノートの断片(ADCO B11202,B11204,B11211)などは引き続き解読・分析中である。
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