2009年度はこの研究計画の最終年度であり、これまでの研究成果をまとめることが必要であり、その成果を世に問うため、春期にまず未刊行の博士学位論文の改稿に着手した。学術出版社が主催する、競争的な学術書籍の出版企画に応募し、学術書として刊行するためである。今回、2008年度までの研究計画で達成した成果は特に大きく、未利用の一時史料で明らかになったナポレオン体制期の宗教的少数派の実態を中心に、内容的に大きく充実を図ることを目指した。作成した投稿用の原稿では、この研究計画の成果を盛り込む形で議論の大幅な進歩と深化を成し遂げ、これまで知られていなかった当時の併合地の宗教状況を中心に、宗教的多元性が政策的に保障され、「礼拝の自由」が諸宗教宗派が併存する地域社会で実現されている様相を明らかにすることができた。この原稿は、無事に6月末の投稿期限までに提出することができた。ただし、研究計画の終了した2009年度末までに、出版社から原稿の採択ないし不採択に関して最終的な結論は示されなかった。夏期には本務校の長期休暇を利用し、パリにおける追加の実地調査を実施した。ここでは、これまで見逃していた史料群の中に、特に1801年10月にフランス全国規模で行われた県レベルでの教会堂の調査結果報告書を発見し、これまで未解明だったナポレオン体制初期のコンコルダ施行直前の宗教的少数派の活動状況や彼らが抱えていた諸問題、カトリックとの宗教的対立の実例を知ることができた。秋季から年末にかけては、夏の実地調査の成果を取り入れて、本務校に付属する研究所の紀要に投稿する論文を作成した。内容的にはこの研究計画を実行する前提となる史料の残存状況の分析であり、今後、同テーマの研究を行おうとする者にとって助けとなるはずである。当該の紀要は年度末に刊行され、拙稿も無事に掲載の運びとなった。
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