本研究では、日本列島中部地域の農耕形成期における「稲作情報の波及と定着のズレの時期」の文化について分析をおこなう。このため、中部地域の弥生前期に併行する文化と中期前半期の文化を主たる対象とし、石器などの道具の組み合わせ、稲関連資料、遺跡の立地と周辺環境などのデータを収集し、評価のための基礎資料の作成をおこなっている。 平成18年度は、こうした資料収集のために静岡県内および愛知県、福井県、東京都等に出張して資料調査をおこなった。また、静岡清水平野におけるモデル構築を進めるため、丘陵部に展開する丸子佐渡山遺跡の一部である手越向山遺跡の発掘調査を実施し、竪穴住居と考えられる遺構を検出した。遺構の詳細な調査は平成19年度に持ち越すこととしたが、これが弥生時代前半期のものであるならば、これまで不明であった農耕形成期の居住形態に迫る発見となる。また、静岡清水平野周辺の瀬名遺跡、天王山遺跡、渋沢遺跡などについても資料調査を実施した。こうした調査を経て、この時期の生業形態の具体的なモデル構築を進めている。 一方、研究の基礎資料となる弥生時代関係図書や国内外の農耕関係図書を購入することができた。また、本研究に関する現在までの知見について、第8回考古学研究会東海例会で「静岡・清水平野における弥生農耕」と題する研究発表をおこなったほか、関連する集落と墓の関係(中部弥生時代研究会第12回例会)、土器の移動の問題(「異系統土器の出会い」研究会)について発表をおこなった。また、関連する駿河湾地方の土器の土器編年に関する論文2編を発表した。
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