朝鮮半島の各地に高句麗・百済・新羅や加耶諸国が並び立ち、覇を競い合った三国時代は、地域ごとにさまざまな特徴をもった墳墓が盛んにつくられた時代でもあった。これまでの研究により、この時代の墳墓は、おおむね木棺墓→木槨墓→竪穴式石槨墓→横穴式・横口式石室墓、という順序で築造されたことが明らかにされている。しかし、これらの墳墓の名称に用いられている「棺」・「槨」・「室」という用語は、明確に定義されずに用いられてきた。その結果、実際の構造や性格が大きく異なる埋葬施設が、用語の共通性により関連づけられるなど、墓制の時空的な変遷を理解する上で、さまざまな問題が生じているのが実情である。 そこで本研究では、墳墓資料の実態を整理して、朝鮮三国時代の墳墓における棺・槨・室の概念の再定義を試み、その具体的な構造の地域性と変遷を明らかにすることで、三国時代墳墓研究に新たな視角を提供することを目的とする。具体的には、(1)「棺」構造の復元と、その特質の解明、(2)「槨」構造の特質の検討、(3)「槨」から「室」への変遷過程の解明、という3つの課題に取り組むことを計画した。
|