1、熊本県上天草市千崎古墳群発掘調査および桐ノ木尾ばね古墳現状実測調査の実施 八代海沿岸地域の古墳時代墓制を具体的に知るためのフィールドとして天草を選び、千崎古墳群5号墳および10号墳の発掘調査を実施した。これにより、5号墳の主体部である横穴式石室、10号墳の主体部である箱式石棺の構造が明らかになった。また、出土遣物により、それまで時期が不明であった天草の箱式石棺が古墳時代前期後半から中期前半に築造された可能性が高くなった。千崎古墳群に関する調査は平成19年度にも継続する予定である。一方、桐ノ木尾ばね古墳では、その残存する主体部の現状実測調査を実施し、竪穴式石室と石棺系石室が並存していることを明らかにした。 2、熊本県上天草市カミノハナ古墳群出土遺物の再整理作業の開始 カミノハナ古墳群は天草で唯一埴輪をもち、また横矧板鋲留短甲を出土している古墳群としてきわめて重要であるが、その約20年前の出土資料の再整理作業を開始した。これも次年度に継続する。 3、天草の古墳時代墓制の実地調査および研究協力者との研究会の実施 今年度、当研究には熊本の古墳時代墓制や遺物に詳しい5名の方(高木恭二・古城史雄・西嶋剛広・竹中克繁・藤本貴仁)に研究協力者としての参加をお願いしたが、それらの方とともに天草の古墳を実地に見学し、八代海沿岸地域の墓制に関して意見交換を行うための研究会を実施した。 4、八代海沿岸地域の古墳時代墓制に関する基礎資料の収集と整理 熊本県地域に分布する箱式石棺や横穴式石室などに関する基礎資料の収集作業を行った。また、肥後型横穴式石室についての研究史を概括的にまとめた。後者については『上天草市史大矢野町編1』にその成果の一部を記述したが、それは近く刊行される予定である。
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