本年度は研究の初年であるため、北海道における後期旧石器時代の集団が残した遺跡について、まず基礎的なデータの集成を行った。北海道の旧石器遺跡では黒曜石か頁岩が多用される。ほとんどの旧石器遺跡でこれら以外の石材は10%以下となっている。在地の石材を用いず、原産地から離れていても、これらどちらかの石材に依存している。石器製作技術システムも二つの石材に頼った高度化が見られ、同時に石材獲得戦略も高度にシステム化されていた可能性が伺える。本研究では原産地がトレースできる黒曜石に焦点をあて、1遺跡で複数の黒曜石原産地の石材が出土するという状況について分析を進めた。 次に蛍光X線分析装置による黒曜石の原産地分析を依頼した。具体的には千歳市祝梅遺跡三角山地点、白滝13遺跡、白滝ホロカ沢I遺跡などの黒曜石原産地分析を行った。祝梅遺跡三角山遺跡ではこれまで断片的な原産地分析が行われていたが、今回初めて個体別資料分類を行って、それを元に原産地分析にかけた。以前の分析結果が全体をよく繁栄していたことが確認された。また原産地近傍の遺跡において、卓越する黒曜石石材があっても、少数の別石材産の石器があることが確認できた。 十勝地方の旧石器遺跡の黒曜石原産地分析は今年度実施出来なかったが、若葉の森遺跡、空港南B遺跡、上似平遺跡、南町遺跡、川西C遺跡などの前半期に属する遺跡の石器組成、石材比率、個体別資料、剥片剥離工程などのデータベース化作業を実施した。原産地分析とこれらのデータを総合することで、石材採取戦略と石器製作技術の相関、集団の移動戦略などを検討できるだろうと考えている。
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