研究概要 |
平成18年度は,東京大都市圏および京阪神大都市圏の地価データと圏域内の土地属性に関すデータを整備し,GISによる空間解析を行った。2006年の地価公示によれば,東京大都市圏の都心部における局地的な地価上昇と新設された鉄道沿線の郊外住宅地地価の上昇が顕在化した。分析の結果,いずれのケースにおいても,開発の形態が従来とは異なっていることが分かり,大都市圏民の都心指向と郊外志向が二極化していることが指摘できた。とくに,都心部の開発方式は職住近接を前提にしたものであり,欧米のコンパクトシティ政策で採用されている開発が適用されている。 そのため,6月には中国北京,9月にはアメリカデンバーとカナダトロントで現地調査を行い,欧米の先進事例と中国での開発例を視察した。北京では郊外の開発も活発に行われており,コンパクトシティ政策と言える開発方式ではないが,購入者の経済的階層を限定し,ターゲットを明確にして行われる都心および郊外の開発によって,東京大都市圏において観察された居住地域構造の二極化が進行している。また,開発に伴い,地価の急激な変動も生じており,政治体制や都市成長の段階が異なっていても,居住地域構造の変容は当該地域全体の地価形成に多大な影響を及ぼしていることが明らかになった(山田・史,2006)。データベースの構築や海外調査に多くの時間が費やされ,公表できた研究成果は1本にとどまったが,蓄積したデータやその解析結果は19年度以降の研究と併せて公表していく予定である。
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