研究概要 |
本研究では,大都市圏域で近年観察されている地価変動の特徴と居住地域構造の変容との関連を解明するために,(1)周辺地域をも含めた集合住宅および戸建住宅の開発動向を明らかにする[開発者側からの視点],(2)中心都市居住者の生活行動と居住意識の変化を明らかにする[居住者側からの視点],(3)空間構造の変容が新たな地価変動メカニズムの形成に及ぼす影響を明らかにする[地価分析],という3つの視点から調査・分析を進めている。 その結果,平成19年度おいては,現在,東京大都市圏においては,都心部の再開発に見られるような職住近接型の高層集合住宅をコアにする居住地域が形成されている一方で,安価な郊外の土地に対する宅地分譲も継続して行われており,居住地選択の空間的分極化が顕在化していることが明らかになった。そして,この現象に関する分析結果については,その一部を平成19年度に論文として公表した(山田,2008a)。しかし一方では,コンパクトシティ政策の提唱により,郊外の宅地開発が抑制される傾向にあり,居住地域構造は,近年,これまで以上に複雑かつ多様になりつつある。この現象に関する分析結果についてもその一部を平成19年度に論文として公表した(山田,2008b)。これまでの分析によって,居住地域構造の変容は,地方圏においても顕著に現れていることが分かり,今後の研究においては,大都市圏と地方圏との比較が不可欠であることを再認識している。この認識は,平成20年度の研究方針にも大きな影響を与え,本研究の総括に関わる重要な論点を提示することになった。
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