研究概要 |
平成18年度及び平成19年度の研究では, 大都市圏域においては, バブル崩壊後の地価の下落が, 都心方向に対するマンション開発を誘引し, 都心部における人口を滞留させる要因となったことを明らかにした。さらに, 職住近接型のマンション開発は, ジェントリフィケーション効果を生み, 2000年代以降は, 土地利用改変が新たな地価変動メカニズムを形成する局面に変移した。このような変化が地方圏においても観察されるかどうかを明らかにするために, 平成20年度においては, 新潟市, 仙台市, 山形市, 酒田市を事例に土地利用変化と地価との関連を調査した。その結果, いずれの都市においても地価の下落による都心部のマンション開発を指摘することはできたものの, それが都心部での人口滞留にまでは至っていないことが明らかになった。地価の変動メカニズムに関しても, 地価が上昇に転じるという変移は観察されず, より安価になった郊外地区の開発が促進される傾向が見られた。 大都市を中心として広範囲の経済圏が形成されている大都市圏域では, 全域的な集約化が進行中であると考えられるが, 地方都市の多くでは都心再生よりも郊外開発の方が卓越することによって, 土地利用の平準化が進行する傾向にある。人口の少子・高齢化に伴い都市構造の集約化が指摘される中にあって, 地方圏の現状は大都市圏よりも深刻であることは明らかであり, 国土全体の改変のためには, 地方都市の居住地域構造に対する研究を併行する必要があるとの結論に至った。
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