日本の近世都市絵図の研究の進展に比較して遅れていた琉球都市絵図の特徴を、首里城部分の分析を含めて明らかにする目的がある。と同時に、地理表現の媒体として、従来、全くそれに該当するものとは考えられてこなかった、琉球王国祭祀の祭祀地理的な表現について、ある種の地理表示と見なすことによって、絵地図や測量絵図が登場する前提となる文化コンテクストの分析に援用する新たな方法を考案している。 絵地図の既存資料や映像の収集を開始後2ヵ年度に行い、同時に新資料の発見に務めた結果、3点の新資料の情報を得、映像を収集した。 琉球における測量術の進展については、元文(乾隆)検地に先立つ時代の測量術の実態を明らかにし、散在していた個別施設絵図資料の捉え直しを行い、首里城絵図と18世紀初頭の王府施設差し絵図の特徴として共通することを確認した。 首里那覇鳥瞰絵図の時代変化の概要把握については、日本台湾共同シンポジウムの機会に公表した。絵地図の個別的な考察はそれぞれに進めてきているが、今後は、網羅的な研究成果としてまとめ直し、日琉中の都市絵図の進展についての比較研究に歩を進めたいと考えている。
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